目的があることは嬉しい。殺せばいい敵と。奪えばいい機体と。世界はクリアになる。とてもクリアに。

 足を踏み出す。手を前へ伸ばす。体重を移す。左に上へ。馴染んだ動きに考えるまでもなく身体は動く。型に倣い自由に。詰まるような呼吸と消えていく声。鈍くなる動作や倒れ伏す音。肌をつたい腕へとはしる感触。切先で肩を突く、抜いて。乱射した銃は足へ、腕へ胸へと吸い込まれていく。流れる、翻る色は目に踊る。全てはいつも一瞬のこと。
 景色は自由に動く。思うままに。予想を裏切ることはない。いつも、未来は約束されている。一方的に。全てが慣れた感覚に従っている。腕をおろす。音が終わり、途切れたノイズの中に残るのはひとりと。

 目の前にある機体へと乗り込んだ。遠くから叫ぶ声と、光がはしる。音と。けれどもう届かない。
 OSの書き換え、立ち上げれば意のままに動いた。意思のままに。これはもう私の腕。

「ステラ、お前は左」
「…わかった」

 気まぐれに。自由だから声なんか届かなくても問題もない。反射した光が残像をつくって見える。あるものは全て壊れて、わめく声には炎が重なる。自由に。未来は約束されている。私は残る。消えるのは周り。
 音も、声も、ここには何もとどかない。私は破壊そのものになる。
 それはとても、とても簡単なこと。

 息をするみたいに。




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